エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~

でも、だったら私の取るべき行動なんて……この場合ひとつしかないじゃない。

私には妊娠の経験はないけれど、同じ女だもの、お腹に命を宿して、ひとりで産み育てなきゃいけないかもしれないって、不安でしょうがない気持ちはわかる。

百合さんにはひどいことを言われたし、全然好きにはなれないけど……だからって、その仕返しにお腹の赤ちゃんの父親を奪うなんてこと、できるはずがないよ――。

私は血の気の引いた唇を震わせ、かすかな声で呟いた。

「……別れ、ます」

嫌だよ。嫌だけど、どう考えたって、その一択しかないんだもの……。

そのひと言にうんうんと深く頷いた社長は、私の肩をぽんと叩くと、運転手にドアを開けるよう指示した。

苦しい決断をした私を気遣うどころか、話さえ済めば、もう私に用はないと、そう言われている気がした。

私は何も考えられず、ぼうっとしながら店の方に戻りかけたけれど、どんな顔をして一誠さんに会えばいいのかわからず、そのままくるりと店に背を向けた。



< 153 / 188 >

この作品をシェア

pagetop