エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~
でも、だったら私の取るべき行動なんて……この場合ひとつしかないじゃない。
私には妊娠の経験はないけれど、同じ女だもの、お腹に命を宿して、ひとりで産み育てなきゃいけないかもしれないって、不安でしょうがない気持ちはわかる。
百合さんにはひどいことを言われたし、全然好きにはなれないけど……だからって、その仕返しにお腹の赤ちゃんの父親を奪うなんてこと、できるはずがないよ――。
私は血の気の引いた唇を震わせ、かすかな声で呟いた。
「……別れ、ます」
嫌だよ。嫌だけど、どう考えたって、その一択しかないんだもの……。
そのひと言にうんうんと深く頷いた社長は、私の肩をぽんと叩くと、運転手にドアを開けるよう指示した。
苦しい決断をした私を気遣うどころか、話さえ済めば、もう私に用はないと、そう言われている気がした。
私は何も考えられず、ぼうっとしながら店の方に戻りかけたけれど、どんな顔をして一誠さんに会えばいいのかわからず、そのままくるりと店に背を向けた。