エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~

「巴、平気? 何があったの?」

すぐに立ち上がって駆け寄ってきたのは、倒れる直前に声を聞いた気がした、露子だ。

あの声、空耳じゃなかったんだ……。でも、どうして。

「露子……なんでここに。っていうか二人とも、具合、悪かったんじゃ」

そう尋ねながら、彼女の後ろで未だベンチに座ったまま、気まずそうにしている黒縁メガネの唯人くんを、ちらっと見た。

「……本当に具合悪かったのは昨日までなの。出張ばっくれたのは、別の理由。でも、さすがに申し訳なくなって二人で現地来てみたら、駅前の居酒屋で倒れてるOL見つけちゃって」

倒れてるOL……私か。それにしても。

「別の理由って?」

「うん。ま、こんなところじゃ話しにくいし、ホテル帰ってゆっくり話そうか」

露子に促されて、状況が飲み込めないままタクシーで宿泊先のビジネスホテルに向かう。

私と露子は後部座席に。唯人くんはひとり助手席に座り、ひとつも会話がない気まずい時間が流れる。

そのとき何気なくバッグの中の携帯を確認したら、一誠さんから着信があったことを知らせる通知が山のように表示され、胸がぎゅっと苦しくなった。

心配してくれたのかな……社長に連れ出されたあと、何も言わずに消えたんだもんね。でも、あなたが心配すべき相手は、私じゃないよ……。


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