エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~
スマホを胸にぎゅっと握りしめて心細い表情をする私に、露子が言う。
「……とりあえず、主任には巴のこと連絡してあるからね。……そういえば、その時言ってたんだけど、部長はなぜか急きょ東京に戻ることになったんだって」
「えっ……?」
東京に戻る……。それは、仕事で? それとも、百合さんのため?
「だから……ってわけじゃないけど、明日の授業は、今日の分まで私たち頑張るから。……虫のいい話かもしれないけど、巴に、私たちのこと許してほしいなって」
露子の大きな猫目が、私をまっすぐに見つめた。その真剣な眼差しに、彼女が何を許してほしいのかを察した。
……そのことなら、私も許す心の準備はとっくにできているし、そもそも私だって、中途半端なことをしてしまった。
色々思いを巡らせている間にタクシーはホテルに到着し、私たちは話す場所を移すことにした。
出張に途中参加することになった露子と唯人くんも主任のはからいで部屋を取ってもらってあるけれど、とりあえずは私が泊まる部屋に三人で集まった。
私と露子は並んでベッドに腰掛け、向き合うように唯人くんが立った。
しばし沈黙が流れたのち、一番にそれを破ったのは唯人くんだった。
「汐月さん、すみませんでした!」
そう言って、深々と頭を下げる。その体勢のまま、“すみません”の内容を語り出した。