エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~
「弱ってるタイミングで、露子が来てくれてよかった……」
前方の白い壁をぼんやり見ながら、しみじみと呟いた。さっきまでは我慢していた涙が、瞳に浮かんで視界が揺れる。
「私もよかった。巴がひとりで泣くことにならなくて」
そう言って背中をさすってくれる露子の手のぬくもりに、ますます涙腺が緩む。
思わず目元を拭った手にマスカラやアイシャドウの色が付き、きっとひどい顔なんだろうと思うけれど、そばにいるのが女友達だと、そんなことも気にせず思い切り泣ける。
「私、……忘れられる、かな……?」
嗚咽を混じらせてそんなことを言うと、露子がしっかりとした口調で言い聞かせてくれる。
「いいんだよ、無理して忘れなくて。部長のこと、気が済むまで好きでいたらいい」
やっぱり……さすがだよ、露子。一誠さんを忘れる自信なんて全然ない私が、一番欲しかった言葉をくれるんだもん。
「う、ううううっ、露子ぉ……」
私は彼女の華奢なウエストに、がばっと抱き着いておいおい泣いた。
今夜、ホントにホントに、露子が隣にいてくれてよかったよ。
一誠さんもだけど、露子のことも、負けないくらい大好き。
心の中でそんなことを強く思いつつ、私は彼女の胸を借りて、ひと晩中泣き明かした。