エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~
「……百合さんの気持ちはどうなんでしょう」
「それなら大丈夫だ。いつも、きみとの食事を楽しんで帰ってきた夜は機嫌がいいんだ。少なからず、好意は抱いているはずだ」
「そうですか、それなら……前向きに検討してみます」
僕は基本的にそこまでロマンチストではないので、絶対に恋愛結婚したい、などというこだわりはあまりなかった。
だから、たとえ政略結婚でも、相手の女性さえ嫌がっていなければ、それなりに幸せな家庭を築ける自信もあった。
とはいえ、妻となる相手を本当に愛せるならば、それが一番いい。
そう思った僕は百合をデートに誘う回数を増やし、彼女に笑いかけ、優しくする時間を長くしていった。たとえ政略結婚でも、隣にいてくれる女性を好きになろうと。
そして無事に婚約を交わし、僕たちは順調に交際を続けていたのだけど――。
「一誠、これどうかしら?」
クリスマスイブの夜、彼女を誘ってやってきたジェリーショップで、ネックレスを試着していた百合の首筋に、僕は見つけてしまった。
小さいけれど、確かな赤黒い痣。……キスマーク、だ。