エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~
自分で付けて忘れる、などということはない。なにせ、僕は百合を抱くどころか、キスすらしたことがなかった。
そんなことは夫婦になればいくらでもできるから、それまでは精神的な部分をゆっくり育てていくつもりだったのだ。
しかし、他の男の影に気づいた瞬間、彼女と築いていこうとしていた明るい家庭の想像図は、僕の中であっけなく崩れ去った。
「百合……きみは、僕のほかに好きな人がいるんだね」
凍り付くような寒い夜。華やかなイルミネーションの中を歩く途中、僕はぽつりと問いかけた。さすがに、ワガママな彼女の口からも謝罪の言葉が出るだろうと、勝手にそんな想像をしていたのだけど。
「……そうよ。結婚前に遊んでやろうと思って、勤務先の飲み会で親しくなった相手と寝て、それから付き合っているわ。でもそれの何が悪いの? 私たち、政略結婚なのよ? 私があなたにこうして付き合ってニコニコしてるのは、そうしてれば好きなものを買ってもらえるし、他人からも幸せそうに見えるだろうからってだけよ。……パパの機嫌もよくなるしね」