エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~
気持ちいいほどに今までの自分の努力を否定され、僕は悲しみや切なさや、呆れすらも通り越し、乾いた笑いをこぼした。そして、彼女に告げたのだ。
「……婚約は解消です。僕は、たとえ政略結婚でも愛し合えれば、と思っていたのですが……どうやら、それは叶わないようなので」
「え? ちょっと待ちなさいよ! 私、あなたの容姿や家柄やスペックがどうしても必要――――」
引き留める言葉はその意味を成しておらず、そのことにまた小さく笑いをこぼしてから、僕は彼女を残してひとり帰宅した。
全く、身勝手な親子に振り回されてしまった……。
不運な事故にでも遭ったような気持ちで、けれど今まで見過ごしていた自分の気持ちに気付けた出来事でもあった。
今まで僕は、ロマンチストではない……と思っていたけど、意外とそういう面もあったみたいだ。政略結婚の相手に裏切られたくらいで、ショックを受けているなんて。
一応、結婚には自分なりの理想があるらしい、と他人事のように納得しながら、日々は平穏に戻った。もちろん社長にも、婚約解消のことは伝えた。