エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~

その時には特に責められたりすることもなかったのだが、今年の春になって、どうしてか彼の態度が急に変わった。

それは、僕自身がトップを務める機能性食品部の、新入社員歓迎会の日のこと。

帰り支度を終え、会場に向かおうと足早にオフィスを出た僕の前に、社長が現れた。彼は僕と対峙するなり、おもむろに言う。

「風間くん、百合とやり直す気はないかね」

「今さら、何を言っているんですか。前にもお伝えした通り、お嬢さんにはほかに恋人が……」

「その男とは、別れさせた」

「えっ?」

耳を疑う言葉だったが、聞けば社長は探偵まで雇ってその男の生い立ちから現在の状況まですべてを調べ上げ、娘婿には相応しくないとわかると、別れさせたそうだ。

「百合は、きみといた方が幸せになれる。お願いだ、もう一度あの子と会ってくれんか」

しかし何を言われても、僕は“今さら何を”としか思えなかった。いくら恋人と別れたからって、以前の本人の態度からは、僕といた方が幸せになれるだなんて、到底思えない。

何より、僕自身がもう、彼女を幸せにしようだなんて気持ちが、微塵もなくなっていた。



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