エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~
「……お断りします。歓迎会に向かうので、失礼します」
「き、きみは……っ。出世できなくなってもいいのかね!?」
「ええ、構いません。降格でも左遷でも、ご自由にどうぞ」
僕はそう言い残し、社長の前を去った。
出世のことはともかく、降格も左遷も実際にされたら困ってしまうけれど、社長の身勝手さにうんざりし、つい口から挑発的なセリフが出てしまった。
ああ、気分が悪い……今夜は、少し酒に助けてもらおうか。歓迎会の行われる居酒屋に向かって歩きつつ、僕はそんなことを思っていた。
しかし、実際に僕を助けてくれたのは、酒ではなく。僕と同じような経験を持つせいか、かたくなに社内恋愛を否定する一人の女子社員――汐月巴だった。
*
「部長は、社内恋愛肯定派……なんですか?」
その夜、僕たちは偶然隣同士の席になり、ひょんなことから社内恋愛についての談義を交わすこととなった。
「別にどちらでもありません。が、大人だからこそ、恋に落ちるきっかけは何だっていいと思います。職場の飲み会の帰りに、勢い余って寝る。そこから本気の恋が生まれないとは限りませんよ?」
完全に、自分に対する皮肉だった。しかし、隣にいた巴まで、まるで自分のことを言われたかのように眉間に皺を寄せていて、僕はその態度が心に引っかかった。