エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~
「そうだ。シミュレーションしてみましょうか。僕と、社内恋愛の」
彼女は戸惑っていたけれど、僕はそれらしい理屈で言いくるめてマンションへと連れ帰った。
久しぶりに飲み過ぎた僕は、見境をなくしてすぐに彼女をベッドに押し倒す。
その瞬間はほぼ“酒の勢い”と“己の欲望”に支配されていただけだったが、行為の最中に何度も「さびしい」と言って涙を流す巴に、次第に別の感情が湧き上がるのを感じた。
この健気な女の子はもっと、誰かに愛されるべきだ。それも、激しく乱暴にではなく、優しくあたたかく、そっと包み込むように。
その“誰か”の役を自分にやらせてほしいと言える確かな気持ちはまだなく、その夜はただ精いっぱい丁寧に、彼女の心と体を愛撫した。
そしてキスをするたび、お互いの体中のあちこちがぶつかり合うたびに。
“キス・イン・ザ・ダーク”
さきほどのバーで僕たちを酔わせたあのカクテルの名前が、頭の中に浮かんでは消えた。
お互いの気持ちが見えない闇の中で迷子になりながら、それでも答えを求めて何度もキスを交わす。
僕と巴の初めての夜は、そんな曖昧で不確かな、けれど印象深い時間だった。