エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~
とはいえ、出張の残りの日程を僕が抜けるわけにもいかない。もともと人員不足の穴埋めだったのだし。
僕は悩み、一旦居酒屋に戻って部下である主任に相談した。もちろん、先ほど騒いでいた女性のことを口外しないように、という口止めも忘れずに。
無理なら無理で、出張が終わってから百合に同行するだけなのだが……。
そんなダメもとの姿勢でいたら、主任に告げられたのは意外過ぎる事実だった。
「佐伯さんと成田くんが、なんと明日から参加できるそうです。で、今はなんでか汐月さんが体調不良で、その彼女に付き添って病院にいるとか……。汐月さんもすでに回復したようですが、うちの会社に変な風邪のウィルスでも蔓延してるんですかねえ」
まったくわけがわからない、という風に首を捻っている彼をよそに、あの二人もやっと観念したんだなと内心納得する。
巴のことも心配だが、佐伯さんがついているのなら、ひとまず安心だろう。それに、二人が戻ってきたのなら、僕が抜けても授業に支障はないはず。
百合を、彼女が結ばれるべき相手の元へと送り届け、すべてに決着がついたなら、今度こそ巴にすべてを伝えよう。
そしてこの手に彼女を抱きしめて……二度と離さない。
そんな強い気持ちを抱きながら、僕はその日のうちに、百合とともに東京に戻ることに決めたのだった。