エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~
色々考えれば考えるほどに私の胸はぎゅ、と握りつぶされたように痛くなる。でも、逃げていても、彼が私の元へ戻ってきてくれるわけじゃない。
そろそろ、腹を決めなきゃ……。
私はひとつ深呼吸をし、肩に下げたバッグのストラップをぎゅっと握りしめる。
そして次々退社しはじめる社員たちの間を縫って、オフィスの角、ガラス張りの彼の部屋へ向かった。
「失礼します」
「呼び立ててすみません。話というのは……」
デスクにいた一誠さんが、話し出そうとしてそこで言葉を止めた。
部屋に入ったはいいものの、彼のデスクのそばまで近寄る勇気はなく、ドアの前で棒立ちになる私に気付いたからだ。
「そんなところに突っ立っていないで、こっちに来てください」
苦笑して手招きする彼だけど、私は素直に歩み寄れなかった。
私、ここまで来て、本人の口から真実を告げられるのが怖いんだ。
聞いてしまったら、一誠さんのことを、好きでいられなくなる。
今まで彼がくれた、ときめきや優しさや、苦しいくらいに愛おしい気持ち。それを、心から全部取り上げられちゃうって思うと、どうしても……。