エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~
黙っているだけの私にしびれを切らし、ぎしっと椅子の音を立てて、一誠さんが立ち上がる。
そしてつかつかと私の元まで歩いてきた彼が目の前で足を止めると、私はおずおずと視線を上げた。一誠さんは感情の読めない表情で、ただまっすぐに私を見つめて言う。
「今から、ついてきて欲しい場所があります。そうすれば、きみの誤解は全て解けますから」
「誤解……?」
まさか、本当は百合さんは妊娠していない、とか……? いや、いくら何でも、社長が娘のことでそんなひどい嘘をつくわけないよね。
……じゃあ、何が誤解? そして何が真実?
一誠さんに視線で問うけれど、彼は説明するより先に、私の手を握ってドアに手を掛けた。
そのまま私の手を引っ張るようにして、ガラス張りの部屋を出て行く。
「ちょ、あの……!」
オフィスには、まだちらほら社員たちがいるのですが……!
思わず一誠さんの手を振り払おうとしても、しっかりと握られた手は全然ほどけない。
案の定私たちは注目の的で、ぶわっと恥ずかしさがこみ上げつつも、そのまま二人でオフィスを突っ切った。