エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~

一階に向かうエレベーターに乗り込んで二人きりになったところで、私は右隣の一誠さんを見上げて言う。

「あの……逃げませんから、手、離してもらえますか?」

「いやです。もう、きみのことは離さないと決めたんです」

ちらりと見下ろされた視線は真剣で、ドキッと胸が高鳴る。

な、なんでこんな展開に……? 私、すごくつらい別れを覚悟していたんだけど……期待、してもいいの? っていうか、期待するなって言う方が無理だよ……。

悶々としながら会社を出た後、タクシーに乗せられることおよそ四十分。

都心からはなれた静かな郊外にある、お城のような外観の建物の前で、一誠さんはタクシーを降りた。

地中海風の白い外壁、オレンジ色の屋根。同じデザインの隣接した別棟には高い塔があって、そのてっぺんには鐘楼が見える。

「……もしかして、結婚式場ですか? ここ」

「ええ。今、とあるカップルがひそやかに式を挙げているのですが……」

敷地内を歩きながら、一誠さんが説明する。その途中でチャペルの入り口まで来て、閉ざされた扉の前に立つと、言葉をつづけた。


< 181 / 188 >

この作品をシェア

pagetop