エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~
「同時に、花嫁が父親との決別宣言をしています。出張の時、僕は先に東京に戻りましたが、百合とそれから、お腹の子の父親と、そのことについて作戦会議をしていたんです」
「え?」
ということは、ここで今式を挙げているのは百合さん? でも、父親と決別宣言って……せっかくの結婚式なのに、どうしてそんなこと。それにお腹の子の父親って……誰のこと?
頭の中にたくさんの疑問が飛び交う中、チャペルの方からギイ、と重たい扉の開く音がした。
そして目に飛び込んできたのは、たったいま誕生したのであろう一組の夫婦と、二人に追いすがる、花嫁の父親の姿……って。
ちょっと待って! 花嫁とその父親はともかく、花婿の方まで知った顔なんですけど……!
私はしばし三人を見つめて呆気にとられた。
「ゆ、百合! 待ちなさい! 話を……!」
「ごめんなさい、パパが認めてくれないなら、親子の縁を切ってでも、彼と二人……ううん、お腹の子と三人で生きて行くって決めたの。」
お腹に負担のかからなそうな、ストンとしたデザインのウエディングドレスを身に纏うのは、にっくき恋敵だと思っていた、社長令嬢の百合さんだ。
そんな彼女の細い腕をガシッとつかんで情けない声を出すのは、青柳社長。
「待ってくれ! 認める! 認めるから……! どうか私にも孫を抱かせるチャンスをくれ……!」
父親のそんな言葉を聞き、百合さんはにっこり微笑む。
そして隣にいる旦那様と静かに頷き合うと、社長の方に向き直る。