エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~
「わかった。……ゴメンねパパ。どうしても彼と一緒になりたくて、意地悪なことして」
そっか……この結婚式は、百合さんが社長をこらしめるために。私にも、ようやく状況が飲み込めてきた。
「いや、私の方こそ……お前たちの気持ちを考えずに、勝手なことをしてすまなかった……このとおりだ」
あのいつも威厳たっぷりな社長が、二人に向かって深々と頭を下げる。すかさず百合さんの旦那様が、「いいんです、お義父さん」なんて言ってフォローしていた。
この図を見る限り、百合さんのお腹にいる子の父親は、一誠さんでなく彼なのだろう。
そして、百合さんが本当に愛している相手も。
そのことはなんとなくわかったけれど、まさか……その人物が、アンタだったとは。
「慎吾……」
無意識に呟いてしまった元カレの名前に、花婿がこちらを振り返る。そして、驚きに目を見開いて、一歩こちらに近づいた。
……あんな風に別れてから初めて会うけど、タキシード姿結構似合ってるじゃん。なんて、普通の男友達のように気軽な思いで向き合えている自分に、ちょっと感動した。
その理由はきっと……一誠さんが隣にいて、手を握ってくれているからだ。
「巴じゃないか。なんで、こんなところに」
「なんでって……こっちが聞きたいくらいだよ。もしかして、あの時の相手って……彼女だったの?」
「ああ、その節は……ホント、悪かったと思ってる」