エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~
気まずそうに頭を掻く慎吾に、ふっと笑いがこぼれる。
……よかった。私たち、お互いに過去は過去として、前を向けているみたい。それにしても、慎吾がパパだなんてねえ。
そんなことを思いながら、“昔のことはもういいよ”と伝えようとしたら、その前に一誠さんがずい、と慎吾の前に出て、強い口調で威圧するように言った。
「巴を捨ててまで選んだ彼女です。幸せにしなければ許しません」
その言葉に、離れた場所にいた百合さんが、「一誠……」と呟き瞳を潤ませる。私も不思議と、嫉妬心は湧き上がらなかった。
だって、一誠さん……カッコいい。百合さんには、彼だって振り回されたはずなのに、そんな風に二人の背中を押してあげるなんて、男らしすぎるよ。
「はい。約束します」
慎吾は深く頷いて、いっそう気を引き締めたような顔をしていた。
もう、守るべき人が二人もいるんだものね。大切な家族と幸せになって欲しい。心からそう思えるよ。
「じゃあ、次は僕たちの番ですね」
ふいに、隣から降ってきたそんな声に、「え?」と間抜けな声で聞き返す。
僕たちの番、ってどういう意味?
一誠さんが私をここへ連れてきたのは、百合さんの子の父親は、自分ではないと証明するため。
そして、彼らが無事に結ばれたことを私に目撃させて、安心させるためかと思っていたんだけど……。