エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~
「あのう、昨夜のことは、その……」
昨夜起きたことをだいたい思い出した私は、そのすべてをなかったことにしてもらいたくて、布団で胸を隠しつつベッドの中の部長の顔を窺う。
しかし、彼の反応は予想のはるかナナメ上をいくものだった。
「はじまりにはちょうどいいですね。間違って一夜を共にして、翌朝慌てる。この展開は社内恋愛のセオリーですから」
「はい?」
「これからひと月の間、じっくり仲を深めましょう。きみとは同じ部署ですからね。付箋で会話したり、ふたりきりの残業を甘いものにしたり、エレベーターに乗り合わせてアイコンタクトを取って見たり、色々と楽しめそうです」
そ、そんな、鼻歌でも歌いだしそうな、楽し気な口ぶりで言われても……。
「私、その……承諾しましたっけ? 社内恋愛シミュレーションの件」
「あれ、忘れてしまったんですか? “やってみます”と言っていましたよ」
「うそ……」
自分の記憶にはないけれど、記憶にないだけで言ってしまったのだろうか。
昨夜の私なら、あり得る……。だって、酔った勢いとはいえこうして好きでもない上司と一夜をともにしてしまったのだ。
同じく酔った勢いで、やります!とか言っちゃったかもしれない。