エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~
愕然とする私とは対照的に、平然としている部長は枕元の携帯を手に取って言う。
「とりあえず、連絡先を交換しておきましょう。今後、何かと必要になりますから」
「は、はぁ……」
言われるがままに連絡先を交換し、私の携帯の電話帳には、風間一誠という名が追加された。
とはいえ、私から連絡することなんてきっとないだろうけれど。
そんな私の心の声を見透かしたように、部長が言う。
「たまには、きみから電話をしてくださいね?」
「えっ」
「シミュレーションとはいえ、恋人同士ですから。ちゃんとそれらしく向き合わなければ、リハビリにもなりませんよ?」
そういえば……これは、私が次の恋に踏み出す時のための、リハビリなんだっけ。かなりの荒療治ではあるけど……せっかくの機会だ。
オトナで女性慣れしている部長はきっと、私の一挙一動に動揺したり傷ついたりもしないだろうし、そこまで変に身構えたりしなくていいのかもしれない。
……どうせ、もう一番恥ずかしいところは見られているのだし。
「わかりました。部長、一か月、よろしくお願いします」
「ええ。こちらこそ」
――私と風間部長の不思議な恋人関係は、こうした幕を開けたのだった。