エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~
「そうか、ごめん。……じゃあ、巴はどうしたい?」
部長は優しく尋ねながら、キッチンにコトリとカップを置いた。
それから私の不機嫌をなだめるように、耳のそばでひとつに結ってある私の髪に触れ、指先でそっと梳きはじめた。それこそ恋人にするような仕草で、私の胸はどきりと音を立てる。
「私は……できれば、あまり周りには知られたくないです。部長、モテますし……」
これだけイケメンで、女心を扱うのがうまくて、出世コースにも乗っていて、その上独身なんだもの。社内で彼を狙っている女性は数え切れない。
「なるほど。あまり同性の反感を買いたくないわけですね」
はい。仰る通りです。さすが、モテる男は察しがいいな。
「そうです。仕事に支障が出たらいやだし……」
「うん。わかった。巴の意思を尊重して、あまり人前できみに特別な態度を取るのはよそう。でも、二人きりの時は許してください。こうして、きみに触れること」
部長はそう言うと、触れていた私の髪をすくいあげ、長い睫毛を伏せてそっとキスをした。
ホント……部長ってば、女の子をドキドキさせることに関して、プロだ。私、彼氏にだって、そんなことされたことないよ。