エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~
なんとなく、部長が王子様のように見えてきてぽうっと見とれていたそのとき。
突然、給湯室のドアがガチャっと開いて、私たちは反射的にパッと身体を離した。
「あ、すみません、ノックもなしに。……おはようございます、汐月さん、部長」
「あ、お、おはよう」
あぶないあぶない……たぶん、部長と接近していたところは見られていなかった、はず。
平静を装いつつ振り向いた先にいたのは、先日の歓迎会の主役、黒縁メガネの新入社員、成田くん。
彼の手には犬の顔がプリントされたマグカップがあり、先輩社員に言われて自分用のカップを用意してきたんであろうという事がうかがえた。
それにしてもそのカップ、どこかで見覚えが……。彼のカップをじっと見つめるうちに、ひらめいた。
「それ、もしかして私のと同じお店のかも」
思わず棚の中から自分のカップを出し、成田くんに見せる。彼のは柴犬で、私のはフレンチブルドッグだけど、デザインがよく似ていた。
「あっ。これも売ってたの見ました。汐月さん、フレブル好きなんですか?」
黒縁メガネの中のつぶらな瞳が、にこっと笑う。
「そうなの~。実家でも買ってるんだけど、ブサカワな感じがたまんなくない?」
「あ、わかります! でもやっぱ、俺は柴だな~。あのうるうるした黒目がも~」
自然と犬トークで盛り上がる、私と成田くん。それを今まで傍観していた部長が、クスッと笑い声を漏らした。