エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~
「はい、汐月です」
『巴? 今どこですか?』
「今……は、会社の近くのお店で、友達と食事してます」
ありのままを告げた私に、部長の声が少し低くなった。
『友達……女性ですか?』
「え? ああはい。部長もご存知の、うちの班の佐伯さんです」
ちらりと露子の方を見ると、彼女はあからさまに不機嫌そうな顔で、こちらを見ている。
“部長にハッキリ言いなさい!”そう言いたげな顔だ。
そ、そうだよね……さっそくだけど、強気に出てみようかな。面と向かっては無理でも、電話越しなら何とかなる気がする。
「あの、部長……! 私、やっぱり無理だと思うんです。部長と、恋人のフリ、なんて」
『急にどうしました? 佐伯さんに何か言われましたか?』
えっ。なんでわかったの……。
まるで見ていたような言い方に戸惑いつつも、負けじと言い返す。
「いえ、露子に言われたとかじゃなくて、私が自分で考えて、無理だと思ったんです」
『そうですか……一応確認のために、佐伯さんに代わってください』
「え……わ、わかりました」
きっと露子なら、私よりも部長に対して強気に出られるはずだ。
期待の眼差しを送りながら、露子に「お願い」とスマホを渡した。