エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~
「はい。佐伯ですけど」
あからさまに無愛想な声で対応した露子。私はテーブルの上でこぶしを握り、頑張れ~!と念を贈りながら、彼女を見守る。
しかし、どうやら部長のほうが一方的に喋っているようで、露子は唇を尖らせつつしばらく黙っていた。
しかしそのうち、どうしてか露子が取り乱し始めた。スマホを握る手に力がこもり、声が大きくなる。
「別に、私はそんなつもり……!」
……何を言われたんだろう。露子の方が、焦っているみたい。
そのうち露子は黙り込んでしまい、またしても部長の言葉に黙って耳を傾ける時間に入った。
ちょっと、どうしちゃったの? 露子ぉ……。どちらが優勢なのか判断がつかず、ハラハラしながら見守っていたそのとき。
「……わかりました。もう口出ししませんよ」
露子の口から諦めたようなセリフが聞こえ、私は耳を疑った。
……あの露子が、もしかして、部長に言い負かされた?
「ええ。あなたに応援される筋合いはありませんけど。はい。失礼します」
通話を終えた露子は、一度大きくため息をつく。そして、私にスマホを差し出しながら、観念したように苦笑した。