エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~
【今夜は佐伯さんにきみを取られてしまったので、明日の夜は僕に時間をください。食事にでも行きましょう】
こ、これは……いちおう、デートの誘い、ということになるのかな。
ああ……仕事の後にそんな予定を控えていたら、明日は職場でどういう顔をすればいいんだか、今日以上にわからなくなりそう……。
【了解です】
とりあえずそれだけ打ったら、すぐに返信が。
【恋人なのに、返信がそっけないですよ】
【……普通のつもりですけど】
【そうですか。では、また明日。食事、楽しみにしていますよ】
あ……楽しみにしてる、か。社交辞令っぽくもあるけど、言われて悪い気はしない。
私もそういう一文を入れたらよかったのかな。……相手が好きな人なら、入れるもんね。
もう一度返信するべきか迷ったけれど、結局は何も送ることなくメッセージのやり取りは終わりになった。
家に帰って、眠る前にベッドに横になった私は、部長とのメールの短いやりとりを意味もなく眺めてはため息をついた。
食事の約束をしただけなのに、なんだろ、このくすぐったい感じ……。
『好きになったら、苦労するよ~あの手の男は』
ふいに脳裏によみがえった露子の忠告に、スマホのカバーを閉じてぶんぶん首を振る。
好きになんか、ならないから……ぜったい。
そう自分に言い聞かせる反面、明日は何を着て行けばいいのか、部長とどんな時間を過ごすことになるのか…….
彼のことに心乱されてばかりで、なかなか寝付けなかった。