エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~
なんだ……ダメになったんだ、食事。私は、今夜のために履いてきた、フレアスカートのすそをぎゅっとつかんだ。
……って、何ちょっとがっかりしてるの? いいじゃない、平穏な夜が過ごせて……。
私はモヤモヤを振り払うように付箋をごみ箱に捨てて、ビルの1階に入っているコンビニに買い物へ。
そこで野菜多めのサンドイッチと野菜ジュースを購入したあとは、十階建ての自社ビルの屋上へとやってきた。
「んー、いい天気」
我らがコバルト製薬は、いちおう製薬会社として社員の健康も気遣ってくれているらしく、ビルの屋上が庭園風になっていて、気持ちがいい。
緑鮮やかな木々や芝生のほか、ウッドデッキやパラソルも設けられていて、ここでランチを楽しむ社員たちも多い。
今日もそんな社員たちの楽しそうな声を聞きつつ、ひとり寂しい私はあまり人気のない木陰のベンチに腰を下ろし、コンビニ袋をガサガサと開けた。
「いただきます」
小さく手を合わせて、サンドイッチにかぶりつく。量も少ないし、話し相手もいないのでさくっと食べ終わり、最後に野菜ジュースをすすった。