エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~
そんな思考に頭の中を占拠され、映画よりリアルな“隣人の狂気”にびくびくしながら、なんとか上映時間をやり過ごすことができた。
エンドロールが終わると、パッと照明が明るくなり、私は放心状態で天井を見上げる。
ああやっと、現実に帰ってこれた……。スリルとは無縁の平和な世にしみじみ浸っていると、隣からくすくす笑う声が聞こえた。
「……なんですか」
「いえ、ちょっとしたお仕置きのつもりだったのに、意地悪が過ぎましたね」
「お仕置き……? 意地悪……?」
形のいい眉を下げてすまなそうにする部長。その表情と言葉に、私の脳内は疑問符で一杯になる。
「ええ。本当は、流行りの恋愛映画でも見ようと思ってたんですけどね。成田くんに迫られてまんざらでもなさそうだった巴を見てたら、意地悪がしたくなってしまって、こんな映画を……。ごめん。つまりはただの嫉妬です」
謝罪とともに、優しい手が私の頭をポンポンと撫でる。
ぶ、部長……ずるい。そんなハッキリと“成田くんに嫉妬した”なんて言われたら、怒るに怒れないじゃない。
所詮“フリ”なのに、恋人としての振る舞いが完璧すぎて、本当の彼氏だと錯覚しそうになる。