エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~
「……で、出ましょうか」
話していたら、スクリーンにはいつの間にか私たちだけになってしまった。嫉妬だなんて言われてなんだか顔が熱いし、早く外の風にあたりたい。
「待って」
シートとシートの間を足早にすり抜けようとする私を、部長が呼び止める。立ち止まった私に追いついた彼は、素早く身を屈めると、私の唇を奪った。
目を閉じることを忘れた私の視線の先には、伏せられた長い睫毛と彼のトレードマークの泣きぼくろが見える。
私とのキスに酔っている……そう思わされるほどの、うっとりと甘い表情。
そんな顔を見せられて、唇には柔らかい熱を当てられて。……頭が、くらくらする。
やがて、彼の唇はふっと離れていったけど、私の瞳が自然と潤んでいたことに気が付くと、たまらなくなったように再び唇を重ねてきた。
私の頭をつかむように固定して、角度を変えながら、何度も何度も唇を啄む。
「ん、ぶ、ちょう……そろそろ、出ない、と」
今は二人きりでも、お掃除の人や、映画館のスタッフがいつ現れるかわからない。
誰かに見られたらという不安や羞恥、それから繰り返されるキスのせいで胸が苦しく、目の前の彼のスーツをぎゅっと握りしめる。