エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~
「彼女が目を覚ましたので、これで。もう、二度と電話してこないでくださいね? ……では」
え、そんな冷たくあしらっていいんですか……?
部長があまりにそっけなく電話を切るものだから、他人事ながらお相手のことが心配になった。
だって私、正式な“新しい彼女”でもないし……。
「あの……今のは……?」
「起こしてしまってすみません。でも、巴には関係のないことです」
「……そう、ですか」
正式な新しい彼女でない私には、これ以上突っ込む権利もない。それにどうせ突っ込んだところで、“秘密です”と言われるのがオチだろう。
でも、部長が電話の相手にぶつけた、ある台詞が引っ掛かっていた。
『きみたちを見習って、僕も今度は、いつもそばにいられる相手と恋愛しようと思いまして』
……あれって、どういう意味なんだろう。
もしかして、部長も最近、私と似たような失恋経験があったりして……?
「巴」
ぐるぐる思考を巡らせていたら、部長に名前を呼ばれて我に返る。
優しい瞳と目が合い、骨ばった手に顎をつかまれ、そのまま短いキスを交わした。こんな朝早くから甘い空気を醸し出されると、妙に恥ずかしい。