エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~

苛立った様子の彼に後頭部をつかまれて、強引に唇が合わさった。舌をねじ込まれて、口内の隅々まで味わうように舐め取られる。

一誠さんの嫉妬が、唾液と一緒に私の中になだれ込んできて、胸が苦しくなる。

ねえ、一誠さん。なんでこんな……私の全部を奪うようなキスをするの? いくら疑似恋人だからって、こんなキス……シミュレーションの域を超えていると思います。

私たち本気で愛し合ってるんだって、錯覚しそうになる――。

重なり合う唇を中心に全身に伝わるの甘い感触とお風呂の熱さにのぼせ、思考が働かなくなってくるなかでも、ただ夢中で彼のキスに応える。

そして長いキスが終わった時には、唇同士をつなぐように、唾液が透明な糸を引いていた。

「約束してください。仕事以外では、彼と関わらないと」

こんなにも激しいキスをしておいて、まだ彼の嫉妬はおさまらないらしい。

私と成田くんがどうにかなるなんて、あり得ないのに……。

彼の嫉妬は杞憂だと思いつつも、私は目の前に小指を出して宣言した。

「わかりました。約束します」

それで、一誠さんの心が平穏になるのなら。少しでも、気持ちを楽にさせてあげられるなら。

すると、ようやく目元を緩ませて微笑んだ一誠さんも小指を絡めてくれ、私たちは小さな子ども同士のように、無邪気に指切りを交わすのだった。



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