エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~
5.シンデレラになった夜
週末の土曜日。一誠さんとは特にデートの約束をしておらず自宅にいたのだけれど、午後になって急に彼から電話がかかってきた。
スマホに彼の名前が表示されたのを見て、なんとなくそわそわしてしまう。
「はい」
ベッドに座って、クッションを抱きしめながらスマホを耳に当てた。
『巴、今日の夕方から夜まで、予定は空いてますか?』
「はい……特に何もありませんけど」
もしかして、会えるのかな……。
最初はそわそわしていただけの気持ちが、ほんのり熱を持った。
……こんな気持ちになるなんて、私も疑似恋人役が板についてきたのかな。
『じゃあ、五時半に車で迎えに行くので、準備しておいてください。ちなみに、身支度はこちらでやりますから、心の準備だけで大丈夫』
「心の準備?」
いったい、どこへ連れて行かれるの? 身支度をそっちでやるっていうのも、よくわからないし……。私の不安を感じ取ったのか、一誠さんが詳細を教えてくれる。
『実はある人の代理で、パーティーに出席しなければならなくなったのですが、パートナーを連れて行かなければいかないルールなんです』
「パ、パーティー? しかも、私、一誠さんのパートナーとして参加するんですか!?」
思わず、ベッドから腰を浮かせて大きな声を出してしまった。