エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~
「すいません……本当に。あのう、私のお給料から少しずつ引いていただいてもいいですから」
店を出て、車の泊めてある駐車場に向かう途中、自分の着ていた服が入ったショップバッグを両手で持ちながら、私は隣の一誠さんを見上げた。
結局、ドレスとそれに合うネックレスとピアスまで買わせてしまい、その上ショップバッグまで「持ちます」と言われたけれど、それだけは断固拒否して今に至る。
「いつまでその話をしてるんですか。僕はもう忘れましたよ。次は、巴にどんな靴を履かせようかなってワクワクしているところです」
「……また高い店連れてく気じゃ」
なかなかお金の話をやめない私に一誠さんはふっと苦笑し、私の手から紙袋をそっと奪ってこう言った。
「きみは結婚したらしっかりと家計を守っていけるいい主婦になりそうですね。でも、今夜は自分をシンデレラだと思ってください。僕は、きみをお姫様にするための魔法使いです。魔法ですから、お金のことも気にしない。……ね?」
月明かりの下、メルヘンチックな発言とともに小首を傾げた彼に微笑まれると、口をつぐむしかなかった。でも、心の中は納得できない思いで一杯だ。
一誠さんが、魔法使い? ……違うよ。あなたは、どちらかというと……王子様のほうだよ。
そんなことを口に出すわけにもいかず、私は悶々としながらも次々魔法をかけられて、見た目だけはお姫様へと近づいていくのだった。