私、いじめたアイツをオトしてみせます。〜イジワル男子攻略法〜
壇上で淡々と挨拶を述べるその姿からは、かつて私にイジワルをして得意げに笑っていた幼げな面影はあんまりなくて。
だけど紛れもなくアイツは、2年もの間、私をいじめて馬鹿にし続けていた張本人。
涼しい顔で挨拶文を読み終え、何事もないように会釈して壇上から下りる冷然な態度。
それがカッコいいのか何なのか、辺りの女子たちはうっとりとした表情で彼の横顔を見つめている。
「でも、そうなんだ。美玲衣の話を聞く限りだと、ちょっと意外かも」
「意外?」
「うん。あたしは直接七海くんたちと同じクラスになったことはないからあたしが見てないだけかもしれないんだけど……。
七海くんの笑ってる顔ってあたし、見たことないもの。郁磨くんたちといるところをたまに廊下とかで見かけたけど、そんな美玲衣が言ってるみたいに明るい印象はなかったなぁ」
アイツは確かに気取ったむかつくヤツだったけど、でも小学生の時は特別笑わない生徒ではなかった。
私にとっては屈辱的以外の何物でもなかったけど、それでも友達が多くて騒がしくて、明るいか静かかでいうと、間違いなく明るいうるさいヤツだった。
中学に上がってからのアイツを私は知らない。
何か、ヤツを変える出来事でもあったのだろうか。
別にそんなこと知ったところで私は同情する義理もないしどうだっていいんだけど。