私、いじめたアイツをオトしてみせます。〜イジワル男子攻略法〜
深々と頭を下げて、私は静かに席に着いた。
ヒソヒソ声で何か周りから言われている気がしたけど、そんなことはどうだっていい。
「ふうん」
無事に自分の番を終えてほっと胸をなでおろした直後。
隣の席からそんな声が短く聞こえた。
思わず振り向くと、今度こそしっかりと、お互いの視線と視線が交じり合う。
七海は特に何かを発するでもなく、じっと私を見つめて、その後体全体を舐め回すかのようにじっくりと私を観察してきた。
満足したのかまた私に目線を合わせて、ふっと小さく笑ったように見せた。
思い出したのだろうか。私のことを。
「篠山中から来ました、根本咲です!バレーボールやってました!あと足の速さもそれなりに自信あります!あ、だけど勉強は全然ダメなので……テスト前は積極的に助けてくれると嬉しいです〜!!」
少し刺々しい雰囲気が私とヤツの間に流れていたとき、背中からそんな空気をぶち壊す、まったりとした挨拶が聞こえて来た。
クラスの皆も咲ちゃんの持つ愛嬌溢れるそのオーラに、クスッと笑みをこぼしている。
そうだ。まだまだ今日は初日なんだから。
ちゃんと高校生活を楽しんでみせる。もう、誰かに馬鹿にされて言い返すこともなく、ただ惨めな自分のまま時を過ごしたくない。
私、負けない。