泣かないで、悪魔さん
真っ白だった。
冷たい、赤く、白く染まった指先。
波がその指先を、洗う。
耳が聞こえない。
いや、音がしないのか
真っ白な視界、見えるのは白い粉。
冷たい粉。
そして、乾いた唇から漏れる、微かな息の痕跡。
この粉はなんだ…
なんなのだ。
私は何故ここにいるの?
こんなに冷たいと感じたのは初めてだった。
自分の体が驚くほどに冷たい、この粉も、
忌まわしいこの白い粉も、ひどく冷たい。
波も、この冷たい体をさらに凍らせるように襲いかかる。
もう死ぬのだと悟った。
だって、息すら出来ない。
吸う息が、空気が、冷たくて…
私の脳は動かない。
寒さに支配されている。
白い、冷たい粉が広がる砂浜の上に、私は横たわっていた。
私も、その砂浜の中に埋もれて行く。
この白い粉とともに、波と共に。
冷たく、凍っていく。
《おい!》