君が隣にいる未来
第一章
嫌なことや辛いことがあった日はお気に入りの河川敷の芝生の上に寝転んで、果てしなく広がる青空を見るのが好きだった。
寝転んだ時に感じるほのかな土と草の匂い、少しチクチクした芝生の感覚が心地よくて。
その心地良さに身を委ねふと今日あったことを振り返る。

それは私、佐々木美海が学校の休み時間にトイレに入っている時のことだった。
バシャーンッ____
という音とともに感じたのは上からかかる圧と冷たい水の感覚。
そのあとに感じたのが肌寒さだった。
複数人の女子の甲高い笑い声とパタパタと遠ざかる足音を私は呆然と立ちつくしながら聞いていた。

「今日は…もう帰ろう…。」

しばらく経ってから私はそうボソリと呟くとトイレの個室扉を開けた。
トイレから出ようとした時ふと鏡に映った自分が目に入る。
濡れた髪の毛と制服、まるで死人のような自分の顔。
何故自分がこんな目にあっているのか。
ふと笑いがこみあげてくる。
私は鏡をあとにすると教室に向かってゆっくりと歩き出した。

しばらく歩いて教室に着いた私は重いひき扉を開けた。
クラスメイトがこちらを見るとコソコソ話し始めクスクスと小さな笑い声が聞こえてくる。

「え、なんであんな髪の毛濡れてんの?笑」
「お〜い〜誰だよ水ぶちまけたやつ笑」
「ちょ、誰か助けてやれよ笑」

クラスメイトの悪意に満ちた声を聞きながら私は足早に自分の席に向かった。
が、その瞬間何かにつまずいて近くの机や椅子を巻き込みながらガタガタと私は教室の床に倒れ込んだ。
あまりの痛さに思わず声が漏れる。

「あ、美海ごめーん笑
ほら、私って足長いじゃん??笑」

そう言って椅子に座っているクラスメイトの宮川佳奈が言う。
足元を見ると伸ばされた佳奈の足があった。

「もー、ちゃんと足元見なきゃだめじゃん美海〜笑」
「ほんとだよ笑」

そう言ってくるのは佳奈の取り巻きの笹崎華と中川藍香だった。
クスクスと教室中に広がる笑い声に私は耐えきれず立ち上がって自分のバックを手に取ると教室から駆け出した。
昇降口まで走りズキズキと痛む足を見ると血が滲んでいた。

「なんで…こんな目にあわなきゃいけないの…?」

込み上げてきそうになる涙をぐっと堪えて私は学校を出てこの河川敷にやってきた。
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