明日を生きる君達へ

メッセージと事故と2度目の悲劇

1本の電話と私

家に帰って、いつも通り宿題をやり出そうとすると、珍しく仕事が無かったお母さんの声が聞こえてくる。
「零ー、お電話よー。」
電話？私に？あっ、もしかして怜斗だろうか。でも、交換したのはケータイ番号だけど……。
お母さんから受話器を受け取り、電話の向こうの人に話しかける。
「もしもし？」
『あ、もしもーし。』
知らない男の子の声。多分年下だろう。声変わり真っ最中という感じの声だ。
「あ……どちら様ですか？」
『あれ？怜斗から俺の事聞いてない？』
誰？てかまず名前を聞かないと……
「えーっと……あの、お名前は…」
『あ、そっか！俺、斎藤凌久って言うんだけど。』
………………え？
「………はい？」
『え、いやだから、斎藤凌久……』
？？？
？？？？
「え……えぇぇぇええぇぇ！？」

あれれぇ？おかしいぞぉ？
某名探偵アニメの様なセリフを思いながら頭を整理しようとする。
「え、斎藤凌久さんですか？中２の？」
『そーそー！やっぱり知ってるんじゃん！』
「いや、あの、亡くなってるってきいたんですけど。」
『そだよー。轢かれちゃって★』
いや、なんでそんなに普通なの？
死んでるんだよね？この人は。なら何故電話を？てか何で私？普通は怜斗にするでしょ！？なんで死んだ人から電話かかってきて私が普通に喋ると思ってるの！？
『でさ、ちょっとお願いがあるんだけど。』
「え？は、はい？」
『実はね、怜斗は数週間後、事故に遭うんだ。』
「んん？」
『だから、君の予知能力で、怜斗を救って欲しいんだ。』
「いやちょっと言ってる意味がわかんないです。」
いやほんと分かんないよ！てかまずこの人が本当に凌久さんなのかも分かんないし！半信半疑というか、私の頭の中では3:7の7が疑いだけど、最近本当に信じられない事ばかりだから、少し信じてるのもまた事実。
「ほ、本当に凌久さんなんですか？」
『うん。そうでなきゃこんな事言わないよ。』
急に真面目なトーンになった凌久さん？の声が言う。
……信じてみるしかないよね。
「……分かりました。正直まだ信じきれませんけど……やってみます。」
『ありがとう。』
多分この人、信じられないくらいの正直者だ。
微笑むこの声の主の顔が目に浮かぶ。
『あ、そうだ。』
「？」
『この電話のことは、怜斗には秘密にして欲しいんだ。』
「え、どうして……」
『あらゆる事が引き金になって事故を起こす可能性が高いからだよ。』
「あ……」
無理やり脳に納得させて、うっかり口を滑らせませんように、と願う。
『じゃあ、これが最後かも知れないけど、また会うかもしれないから、覚えておいてね！怜斗の事はくれぐれも任せたよ！』
「あ、はい。」
年下だと分かっていながらも、ずっと敬語で喋ってたなー、と思いながら、切れた受話器から鳴る小さな音を聞く。
──日にちとか、教えてくれなかったな。
まぁいいか。どうせ明日の夢を見るんなら、事故の前日に必ずその光景を見ることになるのだから。