【短編】蚊取り線香
そう言って、寝室から出ていってしまった。
次から次に涙が溢れる。
なのに、こんな時でさえ大嫌いなあの音が耳元で聞こえた。
もう10月も中旬になるのに…
「蚊取り線香つけなきゃ…」
私はフラフラになりながら、蚊取り線香に火をつけた。
ぐるぐる巻いた蚊取り線香は、まるで今の私の頭の中みたい。
どうしようもならないことを、ずっと考え続けてる…
じわじわアキ君を責め立てて、ますます疲れさせてる。
きっと、アキ君にとっても今日に始まったことじゃないのかもしれない。