幼なじみの優しい彼
うそ、なになに、海ったらなにやってるのよっ。

ハアハアと息を切らせながら、それでも懸命に走る真剣な表情にジーンとしてきた。

海、絶対こんなことするキャラじゃないのにどうしちゃったの。

いつも、落ちついていて、物腰が柔らかくて、誰よりも優しくて、決して自分を見失ったりしない人なのに。

今の彼はこんなに必死に走って私を追いかけてきてくれている。

彼が口を開くと、聞こえないけれど、何を言ってるのか口の形でわかる。


ヒ・カ・リー


ギュッと目を瞑り苦しさに堪えながら彼はなおも走る。

「止めてー止めてくださいっ」

私は運転手さんのところへ行き大声でお願いするけれど、あからさまに嫌な顔をされた。

< 16 / 24 >

この作品をシェア

pagetop