死にたがりティーンエイジを忘れない
三 高校時代前半:転落と逃避行
わたしは美しくないから
高校生活は、入学前からつまずいていた感じがある。
入学式より前におこなわれたオリエンテーションで早速、課題のテキストが配られた。
三教科の、中学のおさらいと高校の予習。
数学の課題は、文系理系の特進クラスだけ特別仕様だった。
中学の範囲は全部できることが前提の、高校で習う範囲の予習課題だ。
因数分解の練習問題が、計算の遅いわたしにとってはあまりにも多かった。
公式の意味だとか効率的なやり方だとかが全然わからないまま、ちまちまと進めたけれど、ギリギリまで終わらなかった。
見直しなんて、とてもじゃなかった。
ひとみと雅樹の引っ越しの手伝い、制服の採寸、教科書の購入、そして入学式。
日山高校は一学年四百人の規模だから、琴野中のころよりも大人数だ。
体育館に詰め込まれた人混みのすさまじさに、めまいがした。
入学式が終わって、ホームルーム。
担任は、目つきのきつい美人の英語教師。
誰の名前も覚えられない単調な自己紹介があって、課題の回答が配られた。
担任が命じた。
「課題は明日までに答え合わせとやり直しをして提出すること。明日から授業が始まるけど、各教科で予習用の課題が配られるはずよ。
予習をおろそかにすると、授業の内容に付いていけない。一年の一学期から落ちこぼれる生徒も毎年いるからね。しっかりやりなさい」
ここは軍隊なんだな、と思った。