死にたがりティーンエイジを忘れない


小説を書くことを平然と認めてくれる大人がいるなんて。

学校の先生がわたしの小説を、授業で書く文章でもないものを誉めてくれるなんて。


驚いてしまって、わたしはただ正直な答えを出すことしかできなかった。


「歴史を知らないと自分独自のファンタジーの世界を創れないと感じているので、勉強したいです。世界史」


わたしは何を話しているんだろう?

相手は高校の先生だ。

この時間は、進路指導の二者面談のはずだ。

なのに、どうして、小説を書く話を?


「知ってるか? 『指輪物語』の映画がもうすぐ公開になる」

「はい」

「楽しみだな。翻訳版の文章が読みにくくて仕方ないが、あの世界観、あの物語はすばらしい。あああいう世界を作れたらと憧れる気持ちは、私にもわかる。私もそういう高校生だった」

「……先生も書かれていたんですか?」

「まあな。だが、書くより読むほうが好きだと、大学時代に気付いた。書ける人間はすごいものだと思う。書きたいという気持ちが、まず素晴らしい」

「わたしにはこれしかないんです。小説を書くことは、わたしにとって唯一、手応えの感じられることで。書けば書くほどうまくなる、まだ伸びていけるって感じられる。だからまだここでは終われないって、そう思って、どうにか生きてるんです」


< 142 / 340 >

この作品をシェア

pagetop