死にたがりティーンエイジを忘れない


わたしは暗記が得意だから、歴史系の勉強に苦痛を覚えたことはない。

それにしても、ただの暗記と歴史研究はまったく別物なのだと、ワクワクする気持ちとともにその事実を知った。


大学でやりたいことって、これだ。

いや、もしも大学生としてちょっとでも生きていられるならば、の話だけれど。


でも、少なくとも進路希望調査で書く内容ができた。

まだ教科書になっていない情報の収集、教科書を形作るための歴史研究を、わたしは自分でやってみたい。


楽しい、と感じだ。

ミネソタで竜也やケリーやブレットたちと笑い合ったのとは違う類の、楽しいという気持ちが、わたしの胸に起こった。

知ることは楽しい。

学ぶことは楽しい。

勉強でさんざん疲れているはずなのに、わたしは確かにそう感じた。


短い春休みは、そして終わった。

わたしは下宿先に引っ越した。それからすぐに竜也からの手紙が、前の住所から下宿へと転送されてきた。

わたしは、住所が変わったことと木場山で歴史を学んできたことを、竜也への返事として書いた。


新学期が始まった。学校帰りは相変わらず歩く。

英語で、頭の中にいるケリーたちに語りかけながら。


文芸部誌の春号は、新入生への配布分を含めて、ずいぶんたくさん印刷された。

わたしは書いたファンタジーは、夜明けの出発の物語。

どこか遠くに行ってしまいたいという気持ちを込めて、やけっぱちなところはあるにしても明るいトーンの物語に仕上げた。


尾崎と上田の関係は相変わらずで、恋に恋するひとみも相変わらずだった。

雅樹がまた誰かをふったという噂を聞くのも、相変わらずだった。


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