死にたがりティーンエイジを忘れない


下宿の風呂場にある体重計に、朝と夕方と夜と、大叔母が眠った後の真夜中と、一日に何度も乗った。

食べる量を減らしただけで、体重は素直に落ち始めた。

最初の一ヶ月で三キロ近く。

体重計の数字が減るのが、わたしの楽しみの一つになった。


食べること自体を忘れ去ってしまえばいいんだ、とも思った。

そうすれば、やせたいという目標は達成できるし、余計な事が消えたぶん勉強もはかどるはずだ。


食べたくない。

食べ物なんかいらない。

コーヒーだけあれば十分。

わたしは自分に暗示をかけた。

野菜とコーヒー。

安心して口に入れていいのは、野菜とコーヒーだけ。


大きな間違いだった。

このときちゃんとした知識があれば、わたしは摂食障害に陥らずに済んだはずだ。


先に結果を書いておきたい。


揚げ物をはじめ、油のあるものを一切取らなかったから、肌からツヤが消えた。

乾燥しがちな敏感肌は、ますますニキビの治りにくいコンディションになった。

また、油不足では、わたしはさほどではなかったけれど、腸内がかさついてひどい便秘になる人も多いらしい。


肉や魚や乳製品を嫌って、タンパク質が不足した。

つねに貧血気味のような、何ともいえない具合の悪さがつきまとうようになった。

筋肉の量が減って、体がひどく冷えるようになった。


炭水化物という、生きるのに必要なエネルギー源を取らなかった。

それでまともに生きられるはずがなかった。

いくつもの心身の不調、生理不順、イライラや焦燥感。

わたしはずっと飢餓状態に近くて、まともではなかった。


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