死にたがりティーンエイジを忘れない


卒業証書をわたしに差し出しながら、鹿山先生は満足そうだった。


「おめでとう。やっとだな。よく頑張った。最後までここにいてくれて、ありがとう。これからは自由にやるといい」

「はい。いろいろ、ご迷惑をおかけしました」

「迷惑というよりは、心配が多かったがな。そうだ、ミネソタのホームステイの件だが、あの悪友から伝言がある」

「イチロー先生からですか?」

「夏休みにバイトをしないか、と。ホームステイの引率を手伝ってほしいんだと」

「そんなことができるほど、わたし、英語できませんけど」

「そうか? まあ、考えておいてやってくれ」

「はい」


大学に合格したこと、まだケリーたちに知らせていない。

手紙を書かなきゃ。

竜也にはすぐメールを送った。

間髪入れずに返信が来たのは、竜也も合格発表の日を知っていて、ケータイを持って待機していたんだろう。


それからもう一つ、と鹿島先生はわたしに封筒を差し出した。


「文芸部の上田から預かった。自分で渡せばいいだろうと言ったんだが、無理なんだそうだ」


手ざわりから、封筒の中に写真が入っているのがわかった。


鹿島先生に深く頭を下げて、わたしは職員室を出た。

きっともう二度とこの学校に来ることもない。


< 244 / 340 >

この作品をシェア

pagetop