死にたがりティーンエイジを忘れない
卒業証書をわたしに差し出しながら、鹿山先生は満足そうだった。
「おめでとう。やっとだな。よく頑張った。最後までここにいてくれて、ありがとう。これからは自由にやるといい」
「はい。いろいろ、ご迷惑をおかけしました」
「迷惑というよりは、心配が多かったがな。そうだ、ミネソタのホームステイの件だが、あの悪友から伝言がある」
「イチロー先生からですか?」
「夏休みにバイトをしないか、と。ホームステイの引率を手伝ってほしいんだと」
「そんなことができるほど、わたし、英語できませんけど」
「そうか? まあ、考えておいてやってくれ」
「はい」
大学に合格したこと、まだケリーたちに知らせていない。
手紙を書かなきゃ。
竜也にはすぐメールを送った。
間髪入れずに返信が来たのは、竜也も合格発表の日を知っていて、ケータイを持って待機していたんだろう。
それからもう一つ、と鹿島先生はわたしに封筒を差し出した。
「文芸部の上田から預かった。自分で渡せばいいだろうと言ったんだが、無理なんだそうだ」
手ざわりから、封筒の中に写真が入っているのがわかった。
鹿島先生に深く頭を下げて、わたしは職員室を出た。
きっともう二度とこの学校に来ることもない。