死にたがりティーンエイジを忘れない


下宿屋に戻ってから、封筒の中身を確かめた。

まず、便箋を取り出して開く。

短い手紙だった。


〈読んだら捨ててください。

 あなたのことが好きでした。

 あなたを描いた絵を、あなたは拒むでしょう。

 これはぼくが持っておきます。

 いつかあなたを忘れたら、塗りつぶします。

 さよなら。お元気で〉


写真には、どこか遠くを見るわたしを描いた絵が写っていた。

上田はもともと油絵の静物画が得意だ。

そのタッチで、まるで置物のようなわたしがそこにいた。


わたしはため息をついた。

ずるいやつだ。

姿を隠したまま、捨てられないものを背負わせるなんて。


嫌いな人間ではなかった。

まともな知り合い方をしたなら、仲良くなれたのかもしれない。

告白されて戸惑ったりとか、そういう普通の何かがあったかもしれない。


無理だったんだ。

わたしにとって上田は、いつまで経っても「智絵の好きな人」でしかあり得なくて、その姿を見るたびに智絵のことを連想してしまう。


「さよなら。お元気で」


わたしは声に出してつぶやいて、手紙と写真を封筒にしまった。

卒業証書と一緒に封印しようと決めた。

捨てはしないけれど、二度と中を見ることもない。


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