死にたがりティーンエイジを忘れない
響告大学に入学手続きをしに行ったときに、新しく住む部屋も押さえてきた。
引っ越し日は三月末。
大叔母の下宿屋にはギリギリまでいさせてもらう。
大して多くもない荷物をまとめるのは簡単だった。
部屋を出る前日に、宅配便で響告市の新しい住所宛てに送った。
わたしの手荷物は、ちょっとした身のまわりのものを入れたバッグと、両親の家から回収したギター。
ずいぶん長いこと弾いていないギターは、緩めた弦がすっかりさびていた。
新しい町に着いたら、まず楽器屋を探して弦を買おう。
下宿屋で過ごす最後の日、母が仕事を休んで琴野町に出てきた。
バタバタと慌ただしくその日の時間は流れて、翌朝、わたしは一人で琴野町から旅立った。
寂しくはなかった。
希望も期待もなかった。
ただ、ホッとしていた。
やっと一人になれる。
やっとこの町から出ていける。
五年間住んだ琴野町を地元と呼ぶことなんて、わたしにはないだろう。
さよなら、学校という世界。
この先も自分を生かしていられるかどうか、新しい町で試してみることにするよ。