死にたがりティーンエイジを忘れない


いつも明るくお客さんたちとしゃべっている先輩こそ、夢飼いの看板娘として有名だ。

ネットの掲示板で話題に上がっているのを見掛けた。


響告市は地元よりもネットが普及していて、ほとんどの学生が一人暮らしの部屋に回線を引き込んでいる。

当時、不特定多数との情報共有の手段はSNSではなく、無料の匿名掲示板だった。

ネットユーザーの発言は過激で、そのぶん一人ひとりの警戒と防衛の心構えも強かった。


わたしは今のところ掲示板に登場していない。

何と書かれるんだろう、と想像すると、背筋や胃のあたりがぞわぞわする。

たぶん、ああいう場所は見ないほうがいい。

基本的に悪口雑言の温床なんだ。


「蒼ちゃんは今日もラストまで?」

「はい」

「まかない、食べて帰ってる?」

「いいえ。やっぱり、上がってからだと遅すぎるので」

「だよねー。でも、シフト入る前も何も食べないでしょ? いつ何を食べてるの? というか、食べてる? 細くて白いから心配になるんだけど」


わたしは無理やり微笑んだ。


「食べてますよ。そんな細くないし、心配ないです」


やめてほしい。

食べることに関する話題には触れないでほしい。


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