死にたがりティーンエイジを忘れない


笹山の部屋は広かった。

わたしの部屋の倍くらいありそうだった。


わたしの背後で、笹山は玄関の鍵を閉めてチェーンロックまで掛けた。

わたしはいつ靴を脱いだんだろう?

呆然と立ち尽くしていると、笹山はわたしの真正面に立った。


「どうしてボクとの約束が守れない? 夕方に会ってたやつ、誰? ずいぶん親しそうだったけど?」


言ってはいけない、と直感的に思った。

竜也のことを知られるのが気まずいとか、そういうなまやさしいものではなくて。


この人が竜也の連絡先を知ったら、竜也に対してどんな言い方をするか、わからない。]

それが怖い。


笹山はわたしに右手を差し出した。


「ケータイ、見せて」

「……イヤです」

「確かにね、恋人のケータイをのぞき見するのは、なかなかひどいことだ。でも、そんなことをボクに言わせる蒼が悪いよね? 蒼がボクとの約束を無視したせいなんだよ」

「ごめんなさい」

「ねえ、どうして? 自覚が足りないの? それとも寂しいの? 蒼はボクの彼女だよ。わかってる?」

「ごめんなさい」

「謝ってばっかりじゃわからないよ。蒼、どうしてほしい? ボクは蒼を愛してるのに、蒼がそんなふうじゃ安心できない」

「ごめんなさい……!」

「ああ、もう、そうだよ。ほんと、もどかしいよ。何で伝わらないかな? もっとしっかり、体に覚え込ませたほうがいいかな?」


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