死にたがりティーンエイジを忘れない


ついでに、ドラッグストアの食品コーナーに回ったとき、金髪でガリガリの女性がいた。

食べ物をいっぱいに入れたカゴを、指輪だらけの手で持っている。

中指の付け根に、吐きダコがある。

あの人もわたしと同じだ。

食べて吐いている。


でも、彼女のほうがわたしよりずっと細かった。

一心不乱に食べ物を選んでカゴに入れている。

たとえ声を掛けたとしても気付かないだろう、と感じた。

常軌を逸した行動って、はたから見ると、あんなふうなんだ。


彼女の金髪の隙間から、たくさんのピアスが見えた。

チラッとのぞいた手首には、真っ赤な傷のラインがびっしりとあった。


わたしはまだ、なまやさしい。

それは安心感のような失望感のような、ぐちゃぐちゃした気持ちだった。

わたしは彼女ほど壊れていないから、まだまともになれるかもしれない。

わたしは彼女みたいにもなれない、中途半端な人間だ。


食べ物を買う気が失せた。

どうせ喉も痛むし。

代わりに、ピアスホールを開けるための道具を買った。

部屋に帰って、衝動に任せて両耳に穴をうがった。

ガシャン、と耳元で音がして、ズンズンと芯まで響く鈍痛が生まれた。

あごのリンパがたちまち腫れた。


< 298 / 340 >

この作品をシェア

pagetop