死にたがりティーンエイジを忘れない
カクテルを注文した笹山は、不機嫌そうに切り出した。
「大事な話って、何?」
わたしはブラックコーヒーだった。
未成年とはいえ、アルコールが飲めないわけではない。
中学時代から、家に引きこもりながら、隠れて父のお酒を飲むことがよくあった。
大学に上がってからはますますそのあたりがめちゃくちゃになっていた。
でも、今はブラックコーヒーだった。
しらふでなければならなかった。
「別れたいんです」
わたしは笹山の部屋の合鍵をテーブルに置いた。
笹山は目を見開いた。
「どうして?」
一般的な基準で言えば、笹山をふる理由なんてないだろう。
国内で指折りの難関校に通うイケメンで、四月からの就職先ももう決まっている。
何に付けても、そつのないタイプ。
でも、わたしはこの人のスペックになんて何の魅力も感じない。
そんな自分の気持ちをハッキリと理解した。
ずっと苦しみ続けてきた間も、具合の悪い予兆があったときも、実際に倒れてしまったときも、わたしはこの人には助けを求めなかった。
それが答えだ。