死にたがりティーンエイジを忘れない
冷静に話しているつもりだった。
でも、わたしの手は細かく震えていて、声まで震えてきて、それで気が付いた。
わたしは激怒している。
マグマみたいな感情を無理やり抑えているせいで、震えてしまう。
笹山もまた震えていたけれど、わたしとは理由が違った。
笹山は涙声だった。
「蒼は、ほかに好きな男がいるんだろう? だからボクを捨てるんだろう? どうしてそんなひどいこと……浮気なんかするんだ? ボクが蒼を愛してる気持ちは、少しも伝わってない?」
愛してる、と。
こんなタイミングで告げられても、ゾッとするだけだ。
この人はわたしと別れる気がない。
あきらめてくれない場合、どうなる?
竜也の身の危険を、まずわたしは心配した。
次に、夢飼いという場所が壊されることを。
そして、笹山の善意も良心もまったく信用していない自分を、改めて知った。
だって、笹山はわたしを追い込むばかりで、手を差し伸べてはくれなかった。
「わたしは腕にも肩にも胸にも傷があるのに、あなたは何も言わなかった」
精神がボロボロになっていても、外から見れば何ともない。
そのアンバランスがつらくて、体の表面を傷付けた。
それはきっとサインだった。
誰かに見付けてほしかった。
なのに、笹山は。
「言えなかった。何て言えばいいかわからなかった。言葉よりも、抱きしめるほうがいいと思ってた」